#104 開会式 56年前の五輪

 「国境を超え、宗教を超えました。このような美しい姿を見たことがありません。誠に和気あいあい、呉越同舟。なごやかな風景であります」。NHKの故・土門正夫アナウンサーは美しき「密」の光景をそう表した。1964年東京五輪の閉会式は、理想的な形で終えた。

 昨日、2020年の東京オリンピックの開会式が開かれた。直前の不祥事に対する後手後手の対応やお偉いさん達の責任の押し付け合いが、若干20歳の私でさえ呆れてしまうほど。過去にユダヤ人虐殺を揶揄したコント?を手掛けた人が五輪演出を担当していた件については、大きな過ちだったと感じる。誰でも振り返りたくない過去はある。何十年前も遡って掘り返す必要は無いのでは?と思う節もある。しかし、この件ばかりは国際問題に関わる問題。オリンピックの定義にも反しているだろう。

 56年前の理想的なオリンピックにはならない事は十分分かっている。早く終わって欲しいという気持ちが湧き出てくるのも仕方がない。それでも、オリンピックをなんとか成功させようとする一心で頑張ってきた人達がいる。開会式についてもポジティブな意見が多くあった。スタッフや選手達の努力と活躍で、理想の形に少しでも近づけてほしい。五輪が終わる頃、やっぱりやらなかった方が良かったという声が少しでも減るよう願うばかりである。