#39 雨の日のサッカー

 車のフロントガラス越しに見える曇り空にため息をつきながら試合会場に向かう。雨の中のサッカーというのはなんだか気分が乗らない。しかし、今日は、県リーグという大事な試合。それも初戦である。気分がどうこういってられる余裕はなく、気合を入れ試合に臨もうと思った。

 会場に着くと、チームメイト達がテント下に集まり、アップの準備をしている光景が目に入る。私も荷物をテント下に置き、準備を始める。そして、雨に濡れないように着替え終わった服をバックの中に入れ、アップに向かった。

 アップが終了し、コート外に整列する。その後、審判が、選手22人が各ポジションにいる事を確認して、試合開始の笛を鳴らした。

 試合は、前半で2-1のスコア、後半で0-0のスコアで、うちのチームが勝利した。県リーグ初戦を初陣で飾る事ができ、チームは満足していたようだった。しかし、私個人としては、プレー内容の質が悪く、良い結果とは言えない初戦になってしまった。一点ゴールは取る事ができたが、それも相手の連携ミスによるものとしか言えなく、満足はとてもできるものではない。その上、ミスが多く、途中交代に繋がってしまった。「お疲れ〜」「ナイスプレー」などとベンチに戻った後、声をかけられたが、気を使われている気がして、ただただ恥ずかしかった。

 その後、ある先輩が途中交代し、ベンチに戻ってきた。私にサッカーを教えてくれるだけでなく、一緒にボーリングをしてくれたり、ご飯に連れてってくれたりする10歳ほど年が離れている先輩だ。その人はサッカーIQが高く、今日も素晴らしいプレーをしていた。その人は私に近寄ってきて、声をかけた。

 「お前ヘボすぎ」

 笑いながら言ってくる彼に少し腹が立った。しかし、言ってくれた事は、紛れもない事実。腹が立っている自分に嫌気がさした。ある種の優しさと受け取り、また、自分のプレーを反省した。

 

 自分に対して、事実を言ってくれる人は、大切にした方がいい。大人は、気を使って相手のよくないところを言わないことが癖になっている。まあ、上手く生きるためには仕方がない。上司の悪いところを言えなかったり、部下にパワハラになるような言い方をしないように気をつけたりする。他にも色々な気を遣っている部分を見る。

 私は、まだ比較的に若い。色々な場面で未熟な自分が垣間見える。だからこそ、私に対して気を使っていない感想や意見を聞く事は、客観的に見ることができ、成長に繋がると思う。

 

 口悪い彼に腹が立ってしまったが、しっかりと受け止め改善につなげたい。