#111 出る杭は打たれる

 「日本の選手が活躍すれば国内の世論は変わる」。IOCのコーツ副会長が五輪の中止・延期を求める日本人に対して自信満々に言った言葉である。手のひらで転がし、まるで日本人を嘲笑うかのような表現。強い憤りを感じる。時間というものは良い意味でも悪い意味でも物事を忘れさせてしまう。今回の恥じるべき五輪も忘れられてしまうのか。

 以前、私は五輪に対してこう意見した。「行政の後手後手の対策で胸を張ることのできないような五輪だが、選手らに罪はない。アンチ五輪であるが開催するとなれば応援しよう」。私だけでなく多くの人がこのような考えを持っているだろう。コーツに言わせてみれば、この考えは単純の一言。IOCのおもうつぼという事になる。

 現在、メディアで日本人選手の勇姿を称える様子が流れている。そんな中、「アンチ五輪」を批判する人も出てきたらしい。「五輪を反対していたのだから、選手を応援するな」このような声も上がっている。しかし、アンチ五輪の人達も選手を否定しているわけでなく五輪がもたらすコロナの影響を危険視して五輪を否定しているのだ。五輪を否定しても選手を応援はしていいはずだろう。

 IOCコーツ氏の発言を知った際は非常に悲しかった。頭の良い人にいいようにあしらわれたという感覚だ。出る杭であり続けることが、賢い大人だと思っていたが、結局打たれてしまうのが現状なのかも知れない。だとしたら、大人というものは非常に居心地が悪いものなのかも知れない。